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東京高等裁判所 平成9年(行コ)33号 判決 1997年8月25日

控訴人(被告) 東京法務局供託官Y

右指定代理人 小濱浩庸

同 高田秀子

同 伊藤泰久

同 及川まさえ

被控訴人(原告) X

右訴訟代理人弁護士 乙野次郎

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

2  右取消部分にかかる被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨。

第二当事者の主張

当事者の主張は、原判決の「事実」欄の第二項記載のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決一〇頁一行目末尾の次に「けだし、原因債務が時効消滅した場合には債務者は供託金を取り戻すことができると解することは、供託自体から既に弁済の効果を享受し得る立場にある債務者を必要以上に保護することになるばかりでなく、原因債務に関する消滅時効の中断や援用の有無という将来の不確定な事実により供託物取戻請求権の時効消滅の成否が左右されることになり、供託をめぐる法律関係を著しく不安定にするからである。」を付加する。)。

第三争点に対する判断

当裁判所の判断は、次のとおり補正、付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第三項記載の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一一頁六行目の「原本の存在」から同七行目の「並びに」までを「証拠(甲二ないし五、七)及び」に訂正し、同一五頁二行目の「弁済供託の場合は、」の次に「債権者の受領拒絶を理由とする弁済供託の場合と異なり、」を付加し、同七行目の「相続人」を「承継人」に訂正する。

2  同一八頁五行目末尾の次に改行の上、

「また、控訴人は、供託の基礎となった債務が時効消滅した場合には債務者は供託金を取り戻すことができると解することは、債務者を必要以上に保護することになるばかりでなく、供託をめぐる法律関係を著しく不安定にする旨主張する。

しかしながら、右見解は供託による債務消滅の効果が右のとおり確定的なものでないことを勘案すると当然のこととして是認し得るばかりでなく、弁済供託が本来債務者の便宜をはかりこれを保護する制度であることを考慮すると、控訴人主張の供託金取戻請求権の存否が将来の不確定な事実に左右されることによる供託をめぐる法律関係の不安定さに伴う不利益は、控訴人において甘受すべきことを要求してもあながち不当なことでもないというべきであるから、控訴人の右主張も採用することはできない。」を付加する。

3  同一九頁六行目の「日の翌日」から同七行目の「八月一日」までを「日である昭和六〇年八月一日から一〇年を経過した平成七年七月三一日」に、同二一頁一行目の初めの「二日」を「一日」にそれぞれ訂正する。

第四結論

以上によれば、被控訴人の本訴請求は原審において認容した限度でのみ理由がある。

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加茂紀久男 裁判官 北山元章 三村晶子)

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